5号線のスポーツカー。 渋滞はさらに悪化した。

もうここまでくるとパパさんらの努力でどうこう出来るレベルを超えている。

いったいどう対応すれば・・・。

さらに最悪なことにパトロール中の警察車両がやってくる。

パパさんが彼らの元へと走りよった。


警官:

「 いったい何をやってるんだ スポーツカーの連中が揃って病院や学校跡地で集会を開いていると通報が入っているぞ。騒動の首謀者はだれなんだ。」



パパさんは ここまで一切の事情を説明した。

すでに自分達の制御できる範囲を超えて情報と協力が一人歩きするほどに膨れ上がってしまったこともあわせて詫びる。

パパさんらは責められることを覚悟していた。

しかし事態は意外な方向へと向かいはじめることとなる。

全ての事情を悟った警察官が署内へと上申。

時を同じくしてテレビ局からの速報が流れはじめている。

署内でもテレビニュースや市民からの通報などでおおよその事態は掌握し始めていたところだった。

すでに上空を飛ぶヘリコプターから撮影された5号線や市内の映像さえテレビ画面に登場している。

元より単にスポーツカー乗り達が、一斉に小樽へ向かったというだけのことであり交通法規に違反している車両群ではない。

さらに小樽へと向かう原動力となった事情は
「 人を助けたい 」という純粋な思いからはじまったもの。

小樽警察署としても当然これを
「 摘発 」という二文字で処理することは不可能と思われた。

しかし現実問題として未だ続々と小樽を目指してやってくるスポーツカーらの勢いは納まる気配を見せない。

小樽市内から続く5号線のスポーツカー渋滞の最後尾は、すでに銭箱地域まで達しようかという状況になっている。

交通麻痺は必至な状況だった。

小樽警察署としても黙って静観していられる状況でもないのだ。

あまりに想定外である状況に判断を苦慮した警察署長は北海道警察本部へさらに上申をかける。

そして本部の打ち出した見解は・・・・。


なんと
「 全面協力!(非公認) 」


以後 五号線上にある小樽エリア内の信号機の全てを黄色点滅へと調整。

その上、要所となる交差点などには警官を数名配置し直接の監視・誘導作業まで手がけ始める。

昇り下り線ともにノンストップで札幌〜小樽間を往来できる対策がとられた。

こんな処置は米空母キティーホーク来港の渋滞の時ですら取られたことはない。

何故そこまでできたのか?

あえて理由をあげるとするならば、警察組織の
「 粋(いき) 」「 人情 」のなせる技としか言いようがなかった。

もしも記者会見が開かれていたとしても
「 ” 人情 ”を基準に警察が動いた 」とはコメントできようはずもない。

すべては暗黙の中で動いてゆく・・・。

これに答えるように非番の警察官までもが自らの意思において登番し、交通整理を担うため街へと散っていった。

彼らの顔はどこか誇らしげに見える。

皆 人の役に立つ仕事を・・・と志し警察官という職務を選んできた者たちだ。

彼ら自身も心のどこかで今日のような日を待ち望んでいたのかもしれない。







市民らの協力から端を発し、今ではヘリコプターからの生中継、それに警察のサポートへと続く。

ここまでくると いつしかテレビはどこのチャンネルを回しても小樽で起きている前代未聞な出来事を伝える映像でみたされてしまった。





「 この事故ってうちにちょくちょく入庫してくれてる勝内くんのことだよなぁ・・・ 」

声の主は休憩室でテレビを見ていたMAZDA小樽支店の支店長 松田さん

( ※ もちろんそんな人 実在しないっすよぉん♪(^^) )


「 これはまた・・・・随分とま大きな事になっているなぁ・・・・。うちとしても何か協力してやれんもんだろうか・・・・。」

テレビでは正確な情報を把握しきれていないアナウンサーが未だに血液提供の呼びかけをしている場面が映っている。


松田支店長:

「 これは急ぎで・・・・ってことだな 確かあの方の血液型もぉ・・・ ( にやり ) うしっ! 」



おもむろに何処かへ電話をかける支店長・・・。


支店長:

「 明日走らせる予定だった車 今から走らせたいので準備しておいていただけませんか それとドライバーの血液型は何型でしたっけ? 」



先方:
「 はぁ? ええと・・・たしかAB型ですけど それが何か 」


支店長:
「 いや それはまた絵に描いたように都合がいい むはははは 。 実は物は相談なんですが・・・かくかく・・・しかじか・・・というわけでして・・・ 向かってもらいたい場所があるんですが。 今からFAXも送らせいただきます 」


先方:
「 そういうことでしたか! わかりました とにかくすぐ出られるようにしておきます 」







場面変わってとあるガレージ・・・。

車両の周りでは 急な出庫準備に大忙しなスタッフらが奔走する。

車両各所の最終チェックを終えエンジンに火が入れられた。

途端、耳をつんざく雷のような咆哮が立ち上がる。


 ファオン !  ファオン ! 
      ババババッ ババババババン !



吠えるようなエンジンサウンドを響かせて獅子が眠りから醒めた瞬間だ。

支店長から送られてきたFAXを手に内容をチェックするスタッフ・・・。

そこには 現在位置から病院までたどるルート指示と説明文が記載されている。

一読したスタッフらから笑みがこぼれ 同時に各々が両の手でガッツボーズを作ってみせる。

そこには 以下のような文面が踊っていた。


 @:贔屓の客が事故のためピンチ
 A:手術のために血液提供が必要(AB型)
 B:事態は急を要する
 C:Bゆえに我々が最も早く駆けつける方法をチョイス
 D:一日違いではあるけれど一応は事前に走行許可はとってはあるわけだしぃ・・・
 E:きっと怪我と戦っているお客様も勇気づけられるはず。
 F:これを目くじら立てて問題視するような小樽市民ではない 
(・・・と勝手に信じてみる)
 G:あの車を出す以上は、アクセルは もち全開で!
 H:我々が作ったロータリーエンジンは絶対に壊れない
 I:以上 責任は全て私がとる ロータリー最高♪


このFAXはすでにコックピット内に着座し待機中であったドライバーへと手渡された。

内容をとるべく ドライバーの視線がせわしなくFAX上を動く。

ドライバーが 親指を立てたガッツポーズで答えた。

これにあわせて 眼前のガレージドアが開かれる。

ガレージ奥から
「 あの車 」が姿をあらわす。





なんと登場したのはぁ・・・












第59回ルマン24時間耐久レース総合優勝を飾った 
  
チャージマツダ787B 55号車!





キタァ-----(゜∀゜)---------!!!


※ ここを開いて読んでみるといいです http://allmazda.cool.ne.jp/lemans/  
  特に3項目めに書いてある 日本車発のルマン総合優勝1991年 」ってとこは要チェックね 
(^^)b 
  どんな車か良く判るよ
 



( まじ話: 小樽市総合博物館内のガレージに今も保管中です )









小樽市が街興しの一案として小樽市総合博物館内において常設展示の活動を行っており、活動の一環としてのデモンストレーション用に市がマツダへ依頼。 

明日は一般行動を走行させるべく整備を進めていた車両だ。

最終整備のため祝津にある小樽市総合博物館内ガレージで保管されていたといういきさつです。

渉外活動の便宜上 行政との橋渡し役として支店長が介在していた形になっている。

本来は 明日執り行われる予定のイベント事へ展示したうえ、市街をデモ走行することになっていた車両。

勿論事前に一般道の走行許可はおりていたが それらに必要な書類の許可日時は全てが明日の日付になっている。

当然 今 走らせて良いわけがない。

一応 最終確認という意味で ルマンカーの管理を託されていた者から支店長へと電話がはいった。




管理者:
「 いいんですね 本当に 」


支店長:
「 俺はあと二年で定年だ。一花咲かせて散るのもよかろう。こんな早期退職も悪くないさ。きっと55番も走りたがってるしな。それより貴方のほうこそいいんですか。免職ものな事件になりますよ きっと。 」


管理者:
「 あはは 今回の件、僕も最後までご一緒しましょう。今更止めても無駄ですよ、これは僕自身の意思でもそうさせていただきます。いや ひょっとするとこれはマツダ社員の総意となるやもしれません 当然おもて向きは公言できませんけれどね。 」




かくして ど派手なオレンジと緑に塗り分けられた



が街へと走りだす。






 ファオン! ファオン! 
    バババババババ・・・・・・!!







すでに小樽交通記念館周辺には、明日走行する予定の伝説のルマンカーを一目みようと遠方から前日いりしていた車好き達がちらほらたむろしていた。

彼らが ルマンという名において世界を制したエンジンサウンドを聞き逃すはずもない。

何事がおきたのか事態を把握せずとも 現実に自分達の目の前をルマンカーが通り過ぎてゆくわけだ。

皆 あとを追うべく自分達の車へと飛び乗った。






ルマンカーを先頭にする形で 小樽のメイン通りまで追いかけてきた各車が出揃う。

5号線の渋滞も小樽の街中までは及んでいないようだ。 これならば走行に問題はない。


( いや 本来は走ってるだけで大問題ですけれどぉ・・・:笑 )


運河横のメインどおりは 車線幅も広く一度に数台が横並びすることができる。

レーシングカーを中央に配置し、その両翼へは追いかけてき MAZDA RX-7 と RX-8 が横並ぶ。

ロータリーエンジン揃い踏みの様相だ。

また、これの背後には 


  NISSAN スカイラインGT-R
    同じく NISSAN フェアレディーZ
      TOYOTA スープラ
        HONDA NSX
           SUBARU インプレッサ
             MITSUBISHI ランサーエボリューション 



などなど 日本車各メーカーのフラッグシップカーが後へと続いた。

ある意味夢の競演な状態です。

信号待ちで停車する車の一群。

前方は おあつらえ向きに一般車両の姿は無い。

元より観光地のど真ん中だ。

ギャラリーの多さは保証する。





他の数台は別として 本物のレーシングカーサウンドがこだましているわけだから運河周辺の観光客らも異変に気づきこちらをじっと見ていた。

誰しも この車群の前を横切ろうとする者はいなかった。

いや 誰しもが これから自分達の前を駆け抜けるだろう光景を待ち望んでいたと書いたほうが正しいかもしれない。





シグナルが青へと変わる

途端 ものすごい爆音とともに各車がスタートダッシュを決める。

ルマンを制した
700馬力のロータリ−パワーが大地を蹴る

沿道を埋める観客からフラッシュの嵐がそそぐ。


ファォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーン!!!





新旧の名車達が小樽の街を駆け抜ける。




皆が 夢にまでみたレーシングカーを自分の愛車で追走出来たことだけで充分に満たされた気持ちであった。

以後、 彼らは目的地である病院前へと車群を流してゆく・・・。

それは まるで使命をおびた者を囲み守るように突き進む騎士団をみるような光景でした。







ここで読者の皆さん ひとつ思い出していただきたい。

小樽市の上空には空撮用のヘリコプターが飛んでいたことを・・・。

もはや 彼らの撮影する映像は全国区のニュースとして生中継されていた。


バラバラバラバラ♪


耳をつんざくような爆音をたてるレーシンカーサウンドは 上空のヘリコプターへも到達している。

当然カメラマンは交通記念館から出庫する時点からの チャージレーシングカラーの勇姿を追っていた。

伝説のルマンカーが一般道を爆走中・・・。

このニュース映像は MAZDA本社のある広島でもみることが出来たわけです。






■広島に在するMAZDA本社では・・・。


社長秘書:

「 社長 大変です! うちの車が一般道走ってます! 」



社長:

「 何を言ってるんだねキミぃ  それは大変結構なことじゃないか ほっ ほっ ほっ ♪」



秘書:
「 いや違うんですよぉ とにかくテレビを見てください! 」


秘書が室内にあった大型プラズマテレビをつける。

見慣れてはいるが 決して一般道を爆走するはずのない車がそこにいた。


( 社長さん テレビにしがみつきながら・・・ )


社長:
「 おお!( ゜∀゜)いい音させてるじゃないか♪ 」と目を輝かせる。


秘書:
( そういう問題じゃないでしょうが・・・:笑 )





社長さん 秘書の方を振り返り・・・。


社長:
 (^ω^;)σ 「 でも なんで走ってんの これ? 」


秘書の返答をきくより先に テレビの映像が次の場面をうつしだす。

そこには 先に書いた シグナルスタートの様子が・・・。


社長:
「 おおぉ ( ゜∀゜)☆〜!!うちの車達がフロントローに整列じゃないか! 
   
いけるよキミぃ♪ こんなコマーシャルいつ撮影してたんだ 
        ワシは知らされておらんかったぞ♪
          それにHONDA宗一郎さんのところの連中とか 
             NISSANゴーンさんとこの連中とか
                 良く撮影協力OKだしたもんだな。 すごいぞ これ! 」




次の瞬間  我が子のように愛着をもつチャージレーシングカラーが 
街を駆け抜ける映像 が流されると 社長は手をたたいて喜んだ。


社長:
「 いやぁ〜 こんなに興奮したのはルマン総合優勝以来かもしれん
                どっきり企画としては最高だったぞ   うん 」



秘書:
「 いやいや 社長。 これはたった今 実際に小樽の街中で起こっている映像でして 無許可での一般道走行だそうです。 詳細は現在調査中です 」


その2秒後 目を回してその場へ
れこむ社長の姿があったことを世界中の誰もが知るよしもなかった。







■場面は再び小樽の街へ

そうこうするうちに 目的地であった病院前へとレーシングカーは到着。

ルマンカーの登場というありえない光景に その場に居合わせた誰しもが目を丸くする。


降りてきたドライバーが
「 血液提供のため 自分達の考える一番早い到着方法でやってきた 」と爽やかな笑顔をみせると院内ロビーからは笑顔と拍手が沸きおこる。





ドライバーが採血を済ませる。


看護婦:
「 すぐにお戻りになられるのですか? 」


ドライバー:

「 えぇ 病院前の道路は駐車禁止ですからね(笑) 」





すでに一般道へ出る時点で無法行為の塊だ。

今更駐車禁止もなにもないんだけどさ へへへ ♪ 

そんな思いを込めて看護婦へとウィンクし帰路へつくドライバー。


看護婦は思った:
( この人になら 私・・・ あげてもいいわ・・・・と ) 

おいおい (^^;) 何あげるんだよぉ 

R18指定( お子様は読んではいけません小説にしちゃうぜ本当。また朝里川のダム映像でも登場させるかい )



ここまで大だい的に報じられたのち 各所においてさらなる工夫・対策が講じらつづけた。

まず5号線の渋滞緩和を考えるため、日本赤十字社の協力の元、小樽入り手前での特設採血ブースが設けられることとなった。

これには小樽ドリームビーチの広大な駐車場が割り当てられる。


     ここね(^^)b





また ことの発端となった事故が飲酒運転によるトラック事故であったこともありトラック協会も動き出す。

協会としては 本日に限って 札幌〜小樽間 の移動には高速道路の利用を強く推奨し、一般国道である5号線をあけておくよう指示がでた。

これは協会に所属する各社へ直接電話連絡された上、移動中の車両に備えているアマチュア無線などからも伝達をうながしてゆくこととなる。

元より国道5号線は渋滞中との道路情報は既知されていた上、協会の指導の甲斐もあり ほぼ全てのトラック車両が国道から姿を消している。

これもまた前代未聞な協力だ。

皆が自分達の出来る少しばかりの努力を互いに持ち寄っていた。






■再び場面は病院へと戻ります。

手術に直接加わっていない院長先生が自室の窓から眼下にひろがるスポーツカーの海を見下ろしている。

部屋の中にあるテレビからは時折自分たちの病院も大写しで登場していた。

今 この瞬間だけで言えば 日本で一番有名な病院になっていることは間違いないだろう。

そして 自分はその院長なのだ。


院長:
「 これは絶対に死なせるわけにはいかん・・・ なんとしても助けなければ・・・ 」


ここで途中経過を随時知らせるように指示してあった手術場より連絡が入る


術場サポート役医師:

「 院長 ほとんどの手術は順調に進んでおります。ただ・・・大動脈弓周囲に解離様に見えている部位が発見されています。破れるところまではいっていないのですが人工血管への置換が必要との判断になりました。ただ・・・その部位の人工血管となると現在札幌にしか在庫がないものと・・・。」



院長:

「 わかった すぐに調べて取り寄せるように指示しよう 」


電話をおいた院長みずからがすぐに手術材料の手配へと走る。

必要となるだろう材料のいくつかはすぐに見つけ出すことができた。

しかし やはりその全ては札幌市内にしか在庫がないということだった。

問題はどうやってここまで運ぶかだ。

車での搬送では5号線の渋滞につかまる可能性が高い。 それでは遅すぎる・・・。

高速道路での移送が最適と思われたまさにその時、高速道路を走行中のトラックより荷崩れがあり これに巻き込まれる形で後続車両らが事故を起こし高速道路が閉鎖になるというニュースが流れた。


院長:
「 なんてことだ! こんな大事な時に! 」



小樽が国道渋滞と高速道路閉鎖という陸の孤島と化してゆく・・・。

バイク便が最適かと思われたが いつ国道5号線が車両規制による
”通行止め”となるか判らないほどの渋滞だ。

警察車両などでさえ 今の国道5号線では自由に往来することは難しいだろう。

確実にこちらへ向かえる保証がない。

なにも搬送品の中身を証明する書簡も持たない一般のバイク便。

彼らがいくら緊急性を主張したところで一旦
”通行止め”の処置が発動すれば、確実に通してもらえるとも限らないことだろう・・・。

しかし それでもバイク便に望みを託すより手がない・・・。



そして焦りの滲む者達へさらに追い討ちをかけるべく最悪なニュースが飛び込んでくることとなる。

札幌〜小樽間をつなぐ最後に残された交通ラインであったJR北海道函館本線が、旧張碓駅付近において発生した小規模な土砂崩れにより運行が停止。

現状は二次災害の予測、復旧作業手順の検討に入るためその運行を完全停止しているとのこと。

詳細な情報は提供されないもののニュースが速報扱いで報じ、その内容を確認するに本日中の復旧はほぼ絶望的との印象をうける。


どうすれば・・・・。





院長は これらの事情を 手術終了を待ちわびる家族らへと自ら説明した。

丘珠からヘリコプターを飛ばすことも検討課題とし現在関係各位と連絡をとりはじめた段階であることも説明内容には付け加えられたものの、なにぶん前例がなくこの作業もはかどってはいないことが伝えられた。


そこで パパさんが口を開く


バイク便でも5号線を抜けることに対しては不安要素が残るのですね。
空も遅く 鉄路も駄目となれば・・・。
それでは我々に協力要請をかけていただけませんか。

海上保安庁の小型高速艇
を使って樽川埠頭と小樽港を直線で結び往復する手法をとれば、確実に搬送できるはずです。
こちらは訓練の形をとれば自発行動として先にスタートを切ることも可能です。
この移動途中に正式依頼をいただければ必要な荷物の移動を請け負うことに対し何の障害もでないことでしょう。
やらせていただけませんか!




現状考えられる一番即応性が良く確実な方法は高速艇の利用・・・。

熟慮している暇はなかった。


院長が必要材料を樽川埠頭へと届けるよう指示をだし、あわせて関係機関へと連絡、海上保安庁への協力要請の依頼をかける手はずを整えはじめる。

小樽エリアで永くあり続けた両者のやりとりは 互いの持つ信用と信頼の高さによりスピードを増してゆく・・・。

「 急事優先! (書類作成の)全てはあとで良い! 」

このヒト言で何もかもが突き進んでゆく・・・ 凄い・・・。





小型高速艇は パパさん自らが操船を願いでた。

パパさん:
「 すぐに戻るから心配するな。 必ず間に合わせる! 」


そう言い残して病院を飛び出してゆくパパさん







ほどなくして彼が小樽色内埠頭へと到着すると すでに仲間が小型高速艇の出航準備を整え終えたところだった。


海上保安庁の仲間:

「 力也さん! いつでもいけます! GO!! 」



仲間が大声で艇の出航準備が整っていることを叫ぶ。


次の瞬間 駆けて来た勢いのまま、タラップすら使わずに岸壁から一気に高速艇へと飛び移るパパさん。

あとは一気に樽川埠頭まで突っ走る。


バァァァァァーーーーーー!


飛ぶがごとく波間をはねてゆく高速艇。

”一救入魂”と書かれた海上保安庁のオリジナルTシャツ。

パパさんの背中の描かれた文字が遠ざかってゆく。

ゆけ! 風のように・・・。













パパさんが戻るのと同時に人工血管への置換術もはじめられた。

パパさんの身体は途中自らの艇があげた波しぶきによって潮まみれだ。

しかし帰宅する気にはどうしてもなれない。

皆 無事に手術が終わるのをまった。

自分達に出来ることは全てやったのだ。

これ以上無いと心から思えるほどに見知らぬ人たちの応援もいただいた。

あと残されているのは 神に祈ることだけ。

誰もが一言も交わさず 祈る・・・。

どうか・・・ どうか・・・。






夜半すぎには 渋滞騒動なども沈静化した。

徐々に 街が普段と変わらぬ光景を取り戻してゆく・・・。






結局 全ての手術が終了したときには時計の針は夜中の4時をまわっていた。

不休で続けられらにもかかわらず ほぼ半日以上を費やした計算になる。

すでに外の景色は夜があけかかっており 空も白々としてきている。

手術は全てにおいて成功。

医師チームとしても やるべきことは全てやり遂げた充足感をもっていた。

大手術を終えた 太の身体が集中治療室へと移される。


    


体中に点滴の管がささっている様相が 未だに痛々しい。

医師より手術中の様子や今後の見通しなどの説明をうける。

医師は図を描くなどして判りやすく説明をしてくれたが、皆その専門的な説明内容をうまく理解することは出来なかった。

どんな状態でもいい どんな手術だったにせよ とにかく回復してくれるのならば・・・。




一通りの説明のあと 集中治療室での面会が許された。

皆が太のベットの周りを囲んだ。

目の前の太は たくさんの
” 心 ”を輸血していただいていたため、顔色だけは元気だった時のそれに戻っているように思えた。

穏やかな表情にみえる顔を覗き込んでいると、まるで寝ているだけにさえ感じられる。

太の頭の病状として脳挫傷などの1次的ダメージが無いことは先にも確認されていた。

途中全身麻酔を施した関係上眠っているとも考えられるが、どちらにしても目をあけてはくれない状態が続いているのは明らかだ。

医師からも まずは意識が戻るかどうかが最初の課題だと説明を受けている。

とはいえ ともかく無事に手術をおえて戻ってきたのだ 周囲の表情にも多少の明るさが戻っていた。

このあと皆は一度帰宅し その後叔父夫婦らだけが入院中の必要品を持参して戻ってくることとなった。


桜ちゃん:
「 私 皆さんが戻ってくるまで残ります 」


彼女は ここに太を一人残すことが耐え難く思えていたのだ。


叔父:

「 お願いできるのならば そうしてやって欲しいです 」


パパさん・ママさんらも 
「 そうしてあげなさい 」と娘の肩をたたく。


皆が帰宅の路につく。

一人残って付き添うとは言ったものの、完全看護体制をとっているこの病院では面会時間に制限があり家族といえども常時付き添うことは許されていない。

限られた時間の中 彼の姿を見守る彼女。

彼女はベットの傍らに用意した丸椅子へと座り 掛け布団からわずかにのぞかせた太の手を握りながらベットサイドへと身体を預けた。

こうしていると 少しでも彼を身近に感じることが出来て心が休まる・・・。

きっと彼も同じことを感じているんだろう・・・・。

きっと・・・・きっと・・・・・。




今日一日とても目まぐるしく状況が変化した。

彼女もまた とても疲れていた。




( BGM挿入っす : ここで X-JAPAN TEARS かけましょう ♪)






いつしか彼女も彼の手をとりながら眠った・・・。

夢の中・・・ 初めて二人で出掛けた海岸の光景が浮かぶ・・・。

屋根のない車の中で交わした他愛も無い会話たち・・・・。

初めて見る強面(こわもて)なパパの姿に ちじみあがっていた彼・・・。

沢山の想い出が走馬灯のように彩られ流れてゆく・・・。

夢の中を旅する彼女は とても幸せだった。

ありったけの幸せを感じたときにも人の目には涙が溢れる。

彼女の頬にも一筋の涙が流れていた・・・。

本当に 本当に 彼女は幸せだった。

容態把握のために巡回してくる看護婦が太の傍らで眠る彼女に気づく。


 ( この娘・・・なんて幸せそうに眠っているの・・・ )


とうに面会時間として約束された時間は過ぎている。

しかしスタッフらの誰一人として面会終了を告げる者はありませんでした。






翌日も太の体調に変化はなく なおも昏睡状態が続いていた。

テレビでも大だい的に報じられつづけた彼のこと 特に病院内ではその存在を知らないものはいなかった。

そんな彼に献身的に付き添う彼女の様子もまた 同じ集中治療室内に家族を託している方々から目にとまる。

不慮の事故による怪我で重症となった被害者・・・。

献身的に看病する可憐な女の子・・・。

それだけでも十分に同情の念を生む場面だ。

しかし 彼女はそれ以上の存在として他の入院患者を見舞う家族らからも一目置かれる存在となる。

病院搬入、手術、集中治療室管理と移り変わってゆくなかで、彼女は一度も彼から離れようとしないのだ。

トイレは勿論のこと、食事なども周囲の者が
「 貴女まで倒れてしまうから少し休んで・・・・ 」と重ねて説得しないと絶対に彼から離れない。

しかもわずかに彼から離れる際でも 必ず彼の顔を両の手で支え、彼の口元へ自分の唇を沿わせてから離れる。

その光景は思わず足をとめて見とれてしまうほどに美しい。

「 心から愛されている患者さん 」

誰しもがそう感じていた。

最重症例であり危篤状態が続いている患者であることなども踏まえて、病院側としても彼女に関しては面会時間に制限をもうけない方針をきめている。

また他の患者家族らも 暗黙の了解でこれに異論を唱えるものはいなかった。






事故から一昼夜が過ぎたわけだ。

昨日の出来事の後処理を報じるニュースがテレビを賑わわせている。

MAZDAの記者会見では 社長以下幹部職員の陳謝が報じられている。

ただ 全ての事情を把握しきったあとでの彼らの謝罪会見はどこかしら誇らしげにも感じられる。

事実 広島の本社には


   「 よくやった 」、
     「 そういう会社の株主であることを誇りに思う 」、
        「 出来れば処分しないであげて欲しい 」



などと賛美・庇護する投書や電話の方が多く届いている。

無許可でレーシングカーを一般道へ出した張本人である2人、支店長と管理者に対しての処分も発表となっている。

支店長は引責辞職。 管理者は海外左遷と発表された

しかし これも実は

支店長に対しては退職金を全額支給、プラス 特別永年勤続慰労金という無理やりとってつけたような増額金をつけたした上で辞職願いを受理。 これにより定年満了時に支払われたであろう退職金総額との差はわずかとなるように配慮されている。

管理者に対しても USA MAZDA への出向・左遷という処分発表がなされたものの、内容的には事実上の栄転処理が言い渡されていた。

会社も彼らには拍手を送っていたというわけだ

余談だが この件以後の一ヶ月間 MAZDA車両の販売台数が 突然 前月比12%増を記録したことも付け加えておくとしよう。








また 多大に世話になってしまった方々への挨拶まわりに出掛けていたパパさんと叔父の両名が、途中で小樽警察署を訪ねると。


担当官からは


 「 法規に違反していたわけでもないし 単なる渋滞騒ぎでしかありませんよ 
       我々は何も特別なことをした覚えなどありません 」



と優しく肩を押されて帰された。


またパパさんが殴りつけた酒酔運転手は鼻と頬の骨を折るといった怪我をしていたことをあわせて知らされたものの。

既に酒が抜けた状態に戻っているトラック運転手からは、


 「 元より自分が引き起こした大事故であること・・・、
     当然のごとく傷害事件として訴えを起こすつもりはありません。
    自分の治療にかかる費用も勿論全額を自己負担するつもりです。
         大変ご迷惑をおかけいたしました。
      今後は精一杯罪の償いと謝罪に尽くすつもりです 」 



とのコメントが出ていることも伝えられた。

このあと 学校跡地のコミュニティー施設などへの挨拶も済ませたのち 彼らは再び病院へともどってゆく。

結局 あれだけの騒動に発展したにもかかわらず  自分達へは何処からも一切処分らしいものは与えられずに過ぎてゆく・・・。

それどころか 小樽中の どこへいっても 
『 太くんの身体お大事に・・・ 』と声をかけていただけた・・・。

本当に有難かった・・・。









病院へ 前日レスキュー活動に携わっていたという男性が訪ねてくる。

昨日の事故の際に自分が預かって保管していたという荷物を受け取った。

彼女が丁重にお礼の言葉を伝えると レスキュー隊員は
「 きっと助かりますよ 」とだけ言い残しすぐに帰ってゆく。

残された手提の紙袋を開くと お酒とグラスがはいっている。

あ・・・そうか・・・昨日はママの誕生日だったんだっけ・・・。





このあと ママさんも見舞いへやってきた。


桜ちゃん:
「 本当は楽しい雰囲気の中で渡すはずだった物だったのだけれど・・・ 」


そう言いながら ママさんへ包みの中身を見せる。

ママさんは
「 ありがとう 嬉しいわ 」といいながらグラスを手にとった。

パパさんのつけたアルミホイールの絵と感謝の文字が見える。

これを見て ママさんが語り始める。


ママ:

「 これね
( ワタナベのアルミホイールの絵を指差し ) 私がパパに買ってあげたプレゼントなのよ 以来ずっと大事にしてくれているの もう随分と前の話よ。」


桜ちゃん:
「そうだったの・・・知らなかったわ」


ママ:

「 ずっと大事にしてくれて・・・絶対に他のじゃ駄目なんだって言い張って換えないのよ 」



桜ちゃん:
「 なんだか判る気がするわ 」


ママ:
「 あれでなければ駄目・・・ あの人でなければ駄目ってこと あるわよね 」



桜ちゃん:
「 ・・・・・・・・・・・ 」


ママ:
「  あなた達の間にも きっと 私達には推し量ることができない互いへの想いがあるのでしょうね。
彼のそばに居てあげなさい そして 貴女のそばに居てもらいなさい  」


そういうとママさんは 愛娘の肩をそっと抱きよせた。











事故から3日がたった。

僕は特に良く眠った朝のように感じていた。

なんだか自分の周囲が騒がしい。

時折鳴り響く何かのアラーム音や 沢山の人が歩きまわる音、 中には聞き知った声の会話も混ざっているようだ。

僕は辺りの様子を確認しようと目をあけようとする。

あれ? おかしいな 目があかない・・・・。

誰かいるのか知りたかったので 声をかけることにする。




僕:

「 ・・・・・・・・・・・・・・・ 」




あれれ 声も出ないじゃん!


いったいどうなっちゃってるんだ

自分がどういう状況なのか うまく把握できない時間がつづく。

そして少しづつ頭の中を整理して何がおきているのかを考えた。



そうだ! 僕は事故にあったんだっけ。




その後どうなったんだ?

目も開けられない 声も出せないってことは死んだのか?

ってことは 丹波哲郎の話していた
大霊界ってとこなのか??

こういう切迫した状況でも 持って生まれた性格というものは変えられないものらしい。

見えないながらも あたりに三途の川とやらが見えてるんじゃなかろうか・・・とドキドキしながら確認してみる僕。

とりあえず 蓮の花を浮かべて光輝く川や 向こう岸で 
おいで おいで している オジイチャンとかは見当たらない。

とにかく目も開けられないし明かりすらわからないままだ。



じゃあ ここ どこよ?



今度は周囲から聞こえる音に集中してみることにした。



あっ 桜ちゃんの声だ!



良かった 耳は聞こえるぞ・・・。



どうも 叔父さん 叔母さん 妹の乙女も居るみたいだなぁ・・・・。

ん!? この野太い声はぁ・・・
パパさんだ!



その後ろに聞こえてるのはママさんだな 

みんな 居るんだ!



僕は周囲で交わされる会話から丹念に状況を把握してゆく。

僕は・・・手術を受けたらしい・・・・。

ってことは病院にいるんだ。

そんでもって 僕はまだ神には召されてはいないらしい・・・。

全身やられてるんだな・・・ どこもかしこも痛む・・・。

左手を ムニュムニュ 握ってくれているのは どうやら彼女らしいぞ。


握りかえせない自分がはがゆい・・・。



僕が自分自身の現状を分析するに どうやら意識は回復したものの、自分の意思表示をする手段の全てが遮断されたままらしい・・・。

何一つ自分の意志で自分の身体を動かせないのだ。

これは 不便だ・・・・。

どうしよう・・・・。

とはいえ 自分でどうこう出来るものでもなかった・・・。

指先いっぽんでも動かせないものだろうかと何度も挑んだが、結果は 
トホホ で終了。

自分の意志どおりに身体が動かせないってことが こんなにもストレスな物なのかと驚くほどイライラする。

いつしか やるほどにイライラするだけの作業ならば馬鹿らしいと感じはじめ、何も考えないようにすることに切り替えた。

こうなると耳でひろう周囲の音だけが楽しみだ。






叔父夫婦が 遠方から駆けつけてきた親類と話すべく いったん太のベットサイドから離れていった。

次にパパさんと 彼女の交わす会話が聞こえる。


パパさん:
「 少し交代しよう 俺が代わりに居るから お前は母さんが持ってきてくれてた弁当食べてこい。乙女ちゃん良かったらその間娘の話し相手になってやってくれないか 」


乙女は快く承諾し彼女を連れ出してくれる。

そうでもしないと彼女が彼のそばを離れようとしないことは誰しもが知っていた。

彼女が僕のベットを離れる際 いつものように僕の唇へ口づけをしてくれた。

残念ながら 僕自身は今までの分を覚えていない。

それでも これは
しかった。

身体は相変わらず動かないものの 幸せな気持ちでいっぱいにしてもらった。

彼女らが消えたあと 今度はパパさんが僕の耳元で話はじめた・・・。


パパ:
「 娘がお前から離れようとしないんだ。正直倒れるんじゃないかと心配するほどだぞ、あの様子じゃあ うちの娘が後追いしかねん。 お前 絶対死ぬんじゃねぇぞ わかったな。 これは命令だ。 」


おいおい 重病人捕まえておいて 命令かよぉ〜
(^^;)

パパさんの台詞がなおも続く。


パパさん:
「 その代わり元気になったら娘はお前にくれてやる 約束だぞ だから早く目を覚ませ 」


不器用な男が 不器用な見舞いの言葉をかけている。

励ましのための言葉であり 真に受けちゃいけないのだろうけれど やっぱり嬉しい。

パパさん ありがとうね。





その後も周囲の会話から 自分は事故の後そのまま死んでもおかしくなかった状態となり、今も一命は取り留めたものの数日つづく意識不明の状態が続いていたということを知った。

また意識がない間中ずっと 彼女が僕のそばから離れなかったことも判った。

ただ 自分のためにルマンカーが街中を駆け抜けたという部分だけは俄かには信じ難い。


 嘘だろぉ それ (^^;)


色々な情報が入ってくれば入ってくるほど 感謝の気持ちが溢れてくる。

特に僕のそばを片時も離れようとしなかったという彼女への想いは特別だ。

絶対に幸せにしてあげなくちゃいけない・・・ 

彼女を
せにする・・・・

でも どうやって 目もあけられないような状態ではどうすることも出来やしないじゃないか・・・・。



どうすれば・・・ どうすれば・・・。








僕のベットサイドへとやってきた医師が僕の体調をチェックし 目の前の叔父へと説明しているのが聞こえる。


医師:
「 うぅぅむ 全身への衝撃によって起こった出血は勿論止まっていますし 頭部の再チェック画像でも異常はみつかっていないんですよ。 いつ目覚めてもおかしくないんですが、逆に一生目が醒めない方もいらっしゃいますからねぇ・・・ううむ・・・」




この会話は
ショックだった・・・



意識は既に回復しているにもかかわらず、悪くするとそれを表現できないがために意識が無いと判断されつづけることに・・・。

勿論こちらの意思は伝えられないまま一生を過ごすことになるやもしれないと悟ったからだ。

手だけが動かないとか 足だけを患ったというのならばリハビリを懸命に頑張ることも出来よう。

だけれど今の僕に何をどう頑張れというのだろうか・・・。



僕は色々と考えた 

考えれば考えるほど不機嫌になってゆく・・・。

結論 ( ^ ^;)b ” 自分ではどうにもならない。 ”

早々に これは頑張るだけ損だなと判断し あとは楽しい想像だけを膨らませて過ごすことに切り替えた。


僕は再び色々と考える。

自作の物語や空想の怪獣など たくさん たくさん 考えた。

そして もしも 元気になれたら・・・。

また元のように動けるようになったなら 彼女を連れて何処へゆこうかなぁ・・・ ということも やっぱり考えた。

空想の世界の中で遊びまわる僕が彼女を乗せて走りまわる車はやっぱりロードスター。

事故という嫌な思いもしたけれど 
やっぱり こいつがいいや♪ と素直に思えた。

今はつまらない病院のベットの上・・・。

また風を感じながらドライブがしたい。

オープンカーの車内へ吹き込む心地よい風の感触を思いかえしていると いつしか僕は眠りの中へと落ちてゆく・・・。





そして
事故から4日目の朝を迎える。

僕はまだ夢の中だ。

今回の夢は僕の大好きな
ドラゴンクエスト調になっている。

勇者は勿論僕です。

さぁ どんな敵でも倒してやるぞぉ と意気込んでみる。

なんだか今日は良い感じ。 乗り乗りだ。

すると そこへ・・・

メタルスライムの群れが現れた。


おお! これはビックチャ−−−−−−−−−−−−−−ンス!


こいつら倒すと経験値がべらぼうに
いからな。

これは倒すしかないぜぇ!!

いけぇ〜! 勇者 僕ちん ♪



僕チンは 疾風の如く魔物達を切りつける

ズバババババ!

なんと快心の一撃 メタルスライムどもをやっつけた!

やりぃー♪ 一気に大量経験値ゲットだぜぇ!!




ピロピロ ピ〜♪

勇者僕ちん はレベルが上がった!!


勇者 僕ちんは 新しく
 ” 目を開けられる ”の特技を覚えた!



ピロピロ ピ〜♪

勇者 僕ちんは 連続してレベルが上がった!


勇者 僕ちん は新しく
” お話が出来る ”の特技を覚えた!



ここで リアルな世界の僕が夢から覚める。

いったい何だったんだ今の夢・・・。

まぁ いいや 今の僕なら何故だかドラゴンでさえ倒せてしまうような気がします。



 ん?!





なにかが昨日と違ってる気が・・・・。


あれ!?  光を感じるぞ!!


ってことはぁ・・・見えるんじゃないだろうか・・・・ 

僕は 恐る 恐る まぶたをあけてみることに・・・。

少しづつ 重たく感じるマブタが持ち上がってゆく。

目の前の視界が まるで霧が晴れてゆくかのごとく 少しづつ 少しづつ はっきりとしてきた。

はじめは眩しさばかりが飛び込んできて何も見えない。

それから 少しづつ目が明るさに慣れ始める。



おおぉ! 見える 見えるぞぉ!



誰かがベットに横たわったままの僕の顔をのぞきこんでいるようだ。

まだ目の前のぼやけた感じが残るその視界の中へ近づいてくる顔らしきものが見えている。



桜ちゃん・・・かなぁ・・・・?




すこしづつ 目が慣れてきた。

女性?

・・・・・あぁ 看護婦さんだ。

看護婦さんが僕の顔を上から覗き込むようにして観察している。


看護婦:
「 あッ! 先生! 太くん目をあけましたよぉ 」



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ええと・・・ ここからはエンディングが二種類選べます

素直なお話の展開を期待するかたは こちら

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