●勝内 太 くんの病状説明


■骨折について
右側頭部頭蓋骨骨折

右鎖骨骨折

右肩甲骨剥離骨折

右上腕骨骨折

右前腕骨骨折

左右肋骨骨折

右側骨盤骨折(腸骨部)

右大腿骨頚部骨折

右下腿腓骨骨折





■臓器について
右腎臓破裂

肝臓にも傷がついている疑いが残る

右肺には折れた肋骨が刺さり気胸の状態である

同じく折れた肋骨が心臓・おそらく大動脈弓の辺りを圧迫・もしくは血管壁を損傷させていると予想される

幸い血管を突き破るといった最悪の状態にはないようだ。





■全身状態について
臓器挫滅による腹腔内への大量の出血、外傷・骨折による出血。これら大量の出血による貧血状態が強い。

大量に失血されており血圧を正常値に保てない。いわゆる外傷性のショック状態です。

沢山の臓器や骨、皮膚組織などが損傷したためカリウムなどの電解質バランスも崩れている。

特にカリウムが正常範囲値からはずれると心停止を起こす原因となりやすいため心配。

貧血が強いことでも意識低下を生むことはあるが、頭部を強打されており頭蓋内出血は否定されたにせよ脳震盪などの意識消失状態もあわせて検討しなければならない。現在の意識状態は点滴を施すために針をさしても全く反応しないほどの昏睡状況。

肺がダメージを受けているので呼吸状態が悪く換気能力も低下している。。





■今後について
現状のまま静観すれば間違いなく救命できない。

ダメージを受けた部位は救命目的を最優先し順序だてて手術してゆくしかない。

すでに多量の失血状態であり これに加えて同時に全ての手術をすすめることは身体への負担が増大し危険と考える。

急変は充分にありえる。最悪は命を落とす、またその可能性は高いと考えられる

手術などがたとえ上手く終えることができても術後には感染症や肺炎などリスクとなる要因は尽きない。

同じく手術などを無事に終えることができたとしても術後に彼の意識が回復する保証はない。

幸い手足の骨折は、それぞれの間接部位には目立った骨折がなく、予後は間接の可動制限もなく良好な経過をたどるのではと予測する。

頭蓋骨の骨折は亀裂骨折であり陥没や骨のずれがみられないため手術対象とせずそのまま骨融合が進むのをまつ。





■手術について
右手足に見られる骨折は内臓器の手術終了後に観血的骨接合術を執り行い金属固定を施す。

右側の腎臓は破裂によりすでに機能していない。止血目的もあり右腎臓摘出術を施すこととなる。
左側の腎臓が正常に機能しているので腎機能の能力低下はいなめないものの人工透析や腎移植の必要性はない。

肺部は突き刺さってしまった肋骨を除去し裂けた部位をケアすることとなる。また穴があき萎んでしまっている肺は体外へチューブを出し吸引をかけることによって再度ふくらみを保たせるよう処置をする。これを持続吸引かけることによって酸素の取り込み二酸化炭素の排出といったいわゆる呼吸を助けることを考える。

呼吸自体は自発が残っておりリズムも正常である。しかし先に説明しているように肺機能そのものは低下している。

肝臓は開腹したさい目視下にて状況を最終確認する。事前に行った腹部エコーやCTスキャンでは小さな損傷で落ち着いているようにみえているものの、挫滅が強ければ部分切除処置が必要になるかもしれない。

心臓は絶えず動きのある臓器であり手術処置が難しい部位である。必要に応じ血管吻合などを行うこととなるが、動いている物を縫うことは出来ないということです。心臓の動きを一時的に止める必要にかられます。また心臓を取り囲むように配置されており同様に絶えず膨らむ萎むという動作を繰り返している肺も邪魔な存在となってしまうため心臓の動きと同様ににこちらも動きを停止させる必要が出てきます。勿論両者は本来動きつづけていることによって生命を維持するという大切な臓器ですのでむやみに止めることは出来ません。この為それぞれの臓器にバイパス処理を施し人工心肺と呼ばれる機材を用いて呼吸・循環機能の維持を図ることとなる。

全ての手術は全身麻酔下で行う。このため現状では呼吸が保たれているものの経口挿管を行うこととなる。

各臓器はその臓器に対する専門医が執刀を担当することとなる。麻酔管理についても同様であり麻酔科の専門医がつくこととなる。

すでに彼らは今回の手術に対する医師団を形成しチームとして最適と思われる手術進行についての検討作業へはいっている。
手術にはさらなる出血が予想される。

現在は保たれている腹腔内圧も、開腹した瞬間に圧がさがる。このため圧均衡が崩れた腹腔内の損傷部位から再び出血がおこる可能性は否定できない。

全身各所におよぶ外傷・創部からの失血も相当な量に達したと予測される。全ての創部は既に消毒処置を施し、傷が開いていたものについては縫合処置を行った。このため体表部分からの出血については現在は止血に成功している。

既に現状でも血液検査の結果では顕著な貧血状態が確認されており、宗教的理由などによって輸血を拒む理由が無いのであればすぐにでも輸血処置を開始したい。

輸血に使われる血液は国内でつくられたものであり、考えうる最高の安全性をもっている。それでも未知のウィルスなどによる感染を完全に否定できるものではない。

以上のように輸血や手術はリスクも併せ持つ、このため事前の同意書が必要となる。
手術時間はあまりにも損傷部位が多すぎるため所要時間の予測すらお伝えできない状況。





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